松島は無事だと聞いた 3年前通りがかりにお茶を飲みに立ち寄った私達に 親切にホテルを案内してくれた総支配人 写真が趣味で 四季折々の美しい松島の写真を見せてくれた 今回、 食堂でその総支配人に会ったとき 写真はもうあまり撮っていないと言っていた あの3・11の時 ひどい情報があきらかになって、その中では 松島はたいしたことないと言った NHKにその総支配人が出演しているのを見かけて 良かったと単純に思っていたのだった この写真を見るまでは 食堂は破壊されつくされ ヘドロがすべてのものを覆っていた 従業員の方は大丈夫だったのかを問うと お休みだった従業員が夫婦で波にさらわれたと悲しそうに教えてくれた あまりにも他のところの被害が大きすぎたので むしろ良かった良かったと言いすぎていた気がしてきた きれいだったホテルは こんな状態だったのだ 初めてその3・11が心に迫ってきた 他人事じゃない大きなものが心におそいかかってきたようだった 写真を見ていたら 泣けてきた 彼は従業員の運命に心を痛め その手でヘドロをかきだし 元のきれいなホテルに戻したのだった 通りがかりのお茶だけを飲みに来た人に気軽に声をかけ 写真を見せてくれて プリントしてパウチまでしてくれて桜と雪に覆われた松島の写真をくれた アイスクリームをご馳走してくれて もし時間があったらお風呂に入っていきませんか?と言ってくれた 気さくなあの時の明るい瞳は少し光を失っているように見えた 単純に良かったですねと言ってしまった 遠くにいて 遠くにいる人の考えだった 哀しみはその時から始まっていたんだ そんなには割り切って生きてはいけないだろう、当たり前だ がんばれがんばれはもう聞きあきただろう 復興、前進、前向き、 もうそんな言葉はほとほと聞き飽きただろう その哀しみが初めて理解できた気がした この写真を見て 画像:センチュリーホテル総支配人撮影 |