学生時代の友達ショーコちゃんとトノ 一年に一度くらいの割合で三人の銀座ランチ トノからの年賀状にはランチしようね楽しみにしているからって ちょうどその頃喘息でいまいちの体調だったので 年賀状も出さず だめだめ人間だった私 桜も咲いてしまったしお詫びの意味でこちらから ランチのお誘いをした 眼の難病の山田病を患っているショーコちゃんの事はちょい心配 とりあえず 銀座ランチお誘いを二人にメール ショーコちゃんからはすぐ返事 治療の副作用か白内障になってしまいほとんど眼が見えなかったらしい でも、そこは彼女らしく 左目は手術して大丈夫、右目の手術はもう少し先だから 行けますっ♪反応がいい 次の日トノから返事 トノではなかった、お嬢さんからだった お母さんっ子で歩くといつも手を繋いで来るんだよぉなんて 笑っていた お兄ちゃんとも仲がよくて トノがどんなに心をこめて大事に二人の子どもを育てているのかが 想像できた トノに似て性格の良さそうなかわいらしい色白の女の子 お花の名前のお嬢さんからだ ん? トノ入院でもしたのかな?と読み進むと 脳出血で って もうそこから先は読めなくなってしまった 投げてしまっていた、携帯 その転がった携帯に触れなくなってしまった 1時間ほどして その怖ろしい続きを読んでみた トノはもうこちらにはいなくなってしまっていた しっかりとした文面で 明日納骨だと書いてあった ランチいつ誘ってくれるかなと楽しそうに話していました と書いてあった それから思い出さないように 考えないように気をつけて慎重に慎重に一週間が過ぎた それでも哀しみは胸にどっと重く 息苦しいほどで 明日香に行った時のトノや 北海道にスキーに行った時のトノや ちょっと唇を尖らせてとぼけて面白いことを言うときの癖や 大学で初めて話しかけて友達になった時の事や 大人になってからもあの出会った18歳のころと変わらない雰囲気を 発作のように思い出して そして 必ず 泣いていた これからどうすればいいんだろうと迷っていた ショーコちゃんも同じだったらしく とうとうメールが来た とりあえず会おう、と。 いつものように銀座ソニービルの1階で待ち合わせ どんなに早めに行っても 小さい体のトノはいた そして眼が会うとめっちゃ笑っていた、いつも。 銀座ソニービルの1階には 誰もいなかった 時間になってショーコちゃんが来た 笑ってこんにちわを言ったけれど スクランブル交差点を渡るときは泣いていた 私達はもう トノには銀座で会えないんだ 誰にでも優しかった せめて周りの人に対してくらいは 自分にも優しくして欲しかった なんのわがままも言わず 自分だけが我慢して 真面目にひたすらまっすぐに生きていたんだ とうとう何もわがままを言わず 優しさだけを残して逝ってしまった 脳出血でそのまま意識が戻らず逝ってしまった どんなに悶々としても どんなに舌打ちしても あの時こうすればああすればと ずっとどれがいったいだめだったのかを思い出しては 自分とトノを責めている これだけは言える 銀座ソニービル1階で あの優しいトノにはもう会えない もう、会えない |