
神楽坂出身のともだち お母さんがまだ神楽坂で1人暮らしをしている もう何十年も体操教室に通って元気にしていると聞いていた お母さんもきっと江戸っ子のちゃきちゃきした女の人なんだろう 色白で着物姿が似合いそうな友達のニックネームは たびやっこ もし彼女が神楽坂で芸妓さんになってたら 売れっ子になっていたはず そう言えばうちらの小さい頃って運動会は足袋を履いていたよねえって 盛り上がった時、 彼女はかなり足が速かったらしく リレーの選手で、いつも1番だったと言う あの足袋ってどんな意味があったんだろうね だって、帰りには破れてぼろぼろになってたし なぜかそんな話をしてお腹が痛いほど笑ってたっけ で、いつのまにかたび奴と呼ばれるようになった 彼女は東京に引っ越してたまにしか会わないけど 先日久々のメールだった 焼き鳥しょうちゃんにまたいっしょに行きましょうって。 そして、その後の文面を読むうち 涙があふれてきた ある日 何かを感じて 1人で暮らしているお母さんのところへ行ったそうだ すると お母さんは亡くなっていたそうだ ほんの2,3時間前に(後で解剖してわかったらしい) 前の日まで体操教室に行って たまたま転んで救急車で運ばれたのに 大丈夫だからと歩いて帰ってそのまま・・・ 誰にも迷惑をかけず、心配をかけず 手を煩わすこともなく 静かに・・・。 魂が天国へ旅たつときに 娘に念を送ったのか 彼女がたどり着いたときは少し前にもう旅立った後だった お会いした事はないけれど 気丈に神楽坂の1人暮らしを楽しんでいると聞いていて、 さすが江戸っ子の女の人だなと尊敬していた でも、かっこよすぎる最期は残された人には よけいに辛いものだ この暑い夏、たびやっこにとっては そんな辛い夏だったんだなあと 悲しみはしばらく止まらなかった |